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<地域の経済動向を点検する シリーズ> NPO法人地域政策イノベーションフォーラム理事長 志築 學 <地域の経済動向を点検する フェーズ3>
特に消費支出指数は消費不況ムードが漂っていたこの時期でも予想外に活発で、リーマンショック前の明確な景気上昇局面にあり、かつ就職バブルのさなかにあった2005年度を100とする指数で100を大幅に上回る(110以上)県も4県(宮城、茨城、岐阜、沖縄)あった。ほとんどの都道府県で100を上回っており、下回ったのはわずか3つの県に過ぎない。しかも下回ったとはいえ、98~99という2005年度にほぼ等しいという水準である。消費不況という言葉は一体なんだったかということになる。 沖縄県の消費が他県での低調さを尻目にかなり活発であるという事実は前回の報告(フェーズ2)で強調したとおりであるが、‘12年半ば以降は、同県消費の活発さだけが目立つという状況ではなくなってきた。前回の稿に見られた「沖縄の一人勝ち」消費という見方に大幅な修正を迫るものである。 実は同指数は大幅に上方修正されており、したがって前回、前々回の報告ではデータが過小に推計されていたことになる。民間企業設備投資や公共投資の指数も消費指数ほどではないにせよ上方修正されており、地域の消費、投資(民間、公共)は予想外の盛り上がりをみせたといってよい。 本稿は、まず消費支出指数に焦点を当て指数の上方修正の度合いとその結果の意味を探り、地域経済の実相に幾分でも迫ってみたい。 ⇒詳細は本編へ <地域の経済動向を点検する フェーズ2>
そこで前稿では内閣府の「地域別支出総合指数」と雇用統計をもとに、とりわけ被災県、東北ブロックの動きに力点を置きつつ地域の経済動向を点検した。だが、残念ながら「地域別支出総合指数」は四半期ごとの発表であるため、新しいデータの発表にはかなりのタイムラグがある。そこで今回は(被災した)各県別の「景気動向指数」と日銀の「地域経済報告」をもとに前稿と同様の視点で点検を行う。 前稿では、公共事業の拡大が「宮城県への一極集中」(恐らくそれも仙台市)の様相を呈しているといった特徴、問題点も指摘したが、景気動向指数(一致指数)の動きにもそのことがかなり色濃く反映されている。宮城県の景気動向指数*はその改善傾向が際立っている。他の被災県、準被災県の同指数も、宮城県ほど顕著ではないにしても改善(すなわち景気回復)が全国ベースのそれに比べめざましい。つまり、景気動向指数という指標で見る限り、「復興需要は果たして景気回復に寄与しているか」という前回の稿の問題意識は、復興需要発生の偏りといった問題点はあるものの、少なくとも今回の(ゆるやかな)景気回復局面においてはある程度肯定的に捉えることができよう。 ⇒詳細は本編へ *景気動向指数にはDI(ディフュージョン・インデックス)とCI(コンポジット・インデックス)があり、従来前者が指標として用いられていたが、2008年4月から後者に移行した。ところが被災、準被災県のなかで宮城県だけは前者しか公表されていない。このため、他県、あるいは全国とは同一ベースでの全体的比較ができないことになるが、若干の工夫で分析を行った結果、宮城県の指標の活発な動きが抜きんでいることが歴然としている。 <地域の経済動向を点検する フェーズ1>
日本経済は2002~3年を底に、「いざなぎ超え」ともいわれた息の長い景気回復過程を経て‘05~7年にはバブル崩壊後最高の経済活動水準を記録した。為替も円安に振れ「円安バブル」の様相を呈し、有効求人倍率も1を上回り、新卒者にとっては「ミニ就職バブル」の感さえあった。しかしその後まもなくしていわゆるリーマンショック(正確にはサブ・プライムローン破綻ショック)で状況が一変したことは、まだ記憶に新しい。 ■筆者:志築 學 1970年 一橋大学 経済学部卒業後(社)日本能率協会総合研究所等を経て1979年(株)三菱総合研究所、1995年 金沢学院大学経営情報学部、2001年 共栄大学国際経営学部 教授
『ソフト化・サービス化の国際比較』 (大蔵省印刷局) 1986年、『入門 日本経済の読み方』 (日本実業出版) 1987年、『ストック&マネーの経済学』
(日本能率協会) 1989年、『環境・エコ ニュービジネス』 (日本実業出版) 1999年、『物語 日本経済50年―奇跡の繁栄はなぜ失われたか 』
(PHP研究所) 2001年、『あらすじで読む日本経済』(PHP研究所)2005年、『日本の産業発展』(創成社)2008年 |
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